オフィス・事務所や店舗で使う金庫はまず、耐火機能がきちんとしているばかりでなく、日常業務に支障をきたさないだけの使い勝手のよさが求められます。耐火の基本機能については規格がしっかりとあるので、ランクの高いものを選べばそれなりのものが入手できますが、使い勝手については会社やお店の使い方によって大きく違ってきますので、なかなか一概にはいえません。
ここではオフィス用・業務用金庫を選ぶときのポイントをいくつかご紹介することにいたします。
「金庫破り」と聞くと聴診器と特殊な工具をもって静かに素早く鍵を開けて中のものを盗む、というようなイメージがありますが、実際はもっと乱暴に扉をバールなどでこじ開けるものや、ドリルなどを使って穴を開けるもの、もっと簡単に複数人でやってきてヨイショとばかりに金庫ごと運び出してしまうもの、などが多いようです。
日本ではこれらのうち「こじ開け」に対する強度を中心に、金庫の防盗性能として規格化されています。
規格には耐工具TL、耐溶断・耐工具TRTLの2つがあり、耐工具TLはバールや電動ドリルなどの工具による破壊に一定時間耐える試験に、耐溶断・耐工具TRTLはこれに加えてガス溶断器などによるより大がかりな破壊に一定時間耐える試験に合格したものに防盗金庫としての表示を許可しています。
耐えられる時間の長さによりそれぞれ15分、30分、60分の等級があります。また、これらとは少しだけ違う種類の耐工具試験を行うTS-15という規格もあり、都合7段階の等級が設けられている形になっています。
侵入窃盗を行う窃盗犯の1件あたりの平均滞在時間は5分といわれており、10分かかると思ったらあきらめるというデータもありますから、ここでいう一番下の等級であるTL-15やTRTL-15、TS-15であっても防盗機能としてはそれなりの効力を発揮するものといってよいでしょう。
いずれにしても、業務用の金庫として、特に多額の現金、有価証券、貴金属の保管に使用する場合は、これらの防盗試験に合格した金庫を選択した方がよいのは間違いありません。
オフィスであれ、店舗であれ、ビジネスで使う重要書類を中心に保存するのであれば、しっかりとした耐火性能を持った金庫を選択することをお勧めします。
業務用金庫であれば、最低1時間できれば90分~2時間の耐火機能をもった金庫を選びましょう。また、火災による急激な温度の上昇や、爆炎を想定した急加熱・衝撃落下併用試験に合格した製品は、より堅牢に大切なものをしっかりと守ってくれます。
ビジネスで使う金庫ですから容量は大きければ大きいほどいいのでしょうが、置き場所のスペースいっぱいのサイズを選んでしまうと重量がかさんでしまい、床の耐荷重を超えてしまうということもあり得ますので十分注意が必要です。
大型の金庫には一般的な金庫の他に書類の保管に特化した耐火機能をもつファイルキャビネット式の金庫などもありますので、主な収納物の種類にあわせて選択するといいでしょう。
業務用金庫選択で実は一番重要なのがこのロックシステム選びです。
このロックシステムの種類によって金庫の使い勝手が大きく違ってきます。
業務用であっても金庫を開け閉めするのがひとりだけという場合は、その人が最も使いやすいと思うロックシステムを選べばいいのですが、業務上複数の人が開け閉めする必要があったり、権限によってアクセスできる場所を制御する必要があったりする場合はその用途にあった形のロックシステムをもつ金庫を選択する必要が出てきます。
たとえば、シリンダーキーとテンキー式ロック併用のロックシステムのなかには、シリンダーキーだけ解錠しておけば、あとは暗証番号だけで金庫を開けられるという仕組みのものもあります。このタイプですと業務時間中はシリンダーキーを常時解錠しておいて、業務終了時にはシリンダーキーをロックして帰るといった使い方をすることができます。
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